京都「五山の送り火・灯籠流し」
- 日々のこと
空が夕焼けから闇へと移る頃、普段は人のまばらな広沢の池が、この時ばかりは人の波に溢れていた。
遍照寺から聞こえてくる読経の声。
人垣を縫って池を覗くと、色とりどりの温かな光を灯す沢山の灯籠が、静かに漂っていた。
これらひとつひとつに、それぞれ大切な人の想い出や祈りが込められているんだろうな。
そう思いながら、この幻想的な光景を眺めていると、もう会えないはずの亡き人の魂が、本当にそこにいるような気がしてくる。
胸中、想い出が駆け巡る中、穏やかな歓声とともに、彼方の山に火が走り始めた。
やがてその火は鳥居を型取り、うっすらと陽炎を揺らめかせながら浮かび上がらせた。
永きに渡り、この地で受け継がれてきた壮大な儀式。
夢幻的なその炎が輝いていたのは、ほんの束の間のこと。
まるで夢のように、あっという間に光は闇夜に消えてしまった。
沢山の人の想いと祈りを抱いて、魂が天界へと召されていったかのようだった。
2018.08.16